写真家気取り「オマエ写真下手だな」

自分自身の価値が高まったかのように見せかけるたった一つの方法。

それは他人の写真を根拠なく批判することです。あるいは根拠があっても根拠について自信が無くて明確に指摘できないケース。あたかも遙かなる高みから見下ろして何がいけないか少しずつヒントを与えるから自分で解決してみろという高圧的な態度。

旅写真などを貼り付ける2ch等でよく起こるケースですが、そういった人に健全な話し合いで構図レベルの意味性を少しずつ剥奪していくと、最後には画質や色合いなどの世界に飛び込んで話をうやむやにしようとします。
彼らはRAW画像の理屈だとか、JFIFの圧縮アルゴリズムに関する知識は皆無ですから、議論するだけ時間の無駄です。ペイント加工を前提としてHSVベースで話しても、プリント前提でCMYK基準で話しても、彼らは唯一の知識であるRGBやケルビンの世界から一歩たりとも外に出てきません。ダイナミックレンジをカメラの専門用語だと固く信じて疑わず、バイキュービックリサンプリングのモダンな実装について一度も検索すらしたことのない知識の浅はかさがそうさせるのでしょうか。
RAW原理主義者などは、真実のRAWの姿をみたことがないのです。ご存じですか? あれは画像ですらありません。D800Eなどの巨大なRAW画像を低スペックマシンのC1Pなどで読み込むと、一瞬真実の姿が映ることがあります。初めて観た人は「画像ファイルが壊れたか」と疑うでしょう。しかしあれが真の姿です。ひとつのドットには、赤か緑か青しかないのです。デジタルの真実をはき違えている機材自慢の吐く嘘を真に受けてはいけません。

攻撃することが目的の批判

どのジャンルでも同じですが、批判や評価の目的が作者に対する攻撃であってはいけません。

写真の場合は、撮った人によっては「いつどこで何を撮ったか」が主題であって、フォーカスが合ってないとか露出が間違ってるとか技術的なことはどうでもいいことがあります。そこでその瞬間シャッターを切ることができた幸運を共有したい人を相手に、構図がどうのこうの議論するのは無粋です。

また写真は絵や音楽の創作物と決定的に異なるのが、明確な意図を嫌う人が一定数いるということです。かっこよく見える構図、簡単には撮ることの出来ないNDフィルターを使った長秒露光、弱くなりがちな赤を浮き立たせるためにトーンカーブを弄った写真など、本来現像者が意図してなかった弱点を上げ連ねて徹底的に攻撃する人がいます。やれ逆光だ、黒潰れだ、白飛びだ、色収差だ、彩度上げすぎだ、その写真にほとんど何の関係もなく、真面目に検証してもあまり的確とは言い難いご意見の数々は、おそらく多くの場合は「撮った人を攻撃する」ことが目的です。

攻撃されやすい写真

添田撮影 - 50年前の小倉沢

上記のような写真は不思議と批判を受けることは皆無です。逆に、綺麗な構図で撮った写真を安易に価格コムや2chなどでバラ撒くと、壮絶な艦砲射撃の的になります。不思議ですね。これには明確な理由があります。

技術的意図の有無

構図を少しでも意識した場合、光源、射界に入るすべてのオブジェクト、絞り値、ISO感度、シャッター速度、焦点距離を完璧に近づけて撮影し、現像においても間違った加工を行ってはなりません。少しでもベテランっぽいことをすると、自称ベテラン写真家たちが一斉に集まり、自らのちっぽけな矜恃とプライドを満足させるために遙かなる高みから神の声を届けてくれます。

ほんとうに下手すぎる

すべての写真を斜めで撮影し、何を撮ったかわからない写真をバラ撒けば、それはさすがに酷いと言わざるを得ません。撮る人が何に向かい合ったかわからない写真なんて見る価値ありません。技術的なことに興味がなければ、「間違った写真の撮り方」をご覧になって、失敗だけ避ければいいです。

加工しすぎ

下の写真について「発色がすごい好き」と仰ってくれた方がいますが「加工しすぎ」と批判する方はいません。はっきりとした理由はわかりませんが、被写体がよかったことと、多くの人が「ひょっとしてデジタルじゃない」と気づいたのだと思います。そうです、これはフィルムです。Ekter100という現在は36枚1300円もする高級ネガフィルムです(当時は600円)。

江ノ島

この写真に近づけようとデジタル画像を編集すると、おそらく彩度を爆上げすることになりますが、その結果本来そこにあるはずのない色が浮き出します。これを「偽色」と言い、多くのデジタルカメラユーザが親の敵のように嫌います。フィルムをエミュレートするのはそう容易いことではありません。偽色を抑え、シャープさを保ちながら輪郭の柔らかさを再現するので、純正現像ソフトなどでは実現不能です。C1Pか最低でもLightroomが必要になります。それを使用したとしても、加工したことがバレた場合に心ない言葉に晒される覚悟が必要になります。