カメラを傾ける人ってなんなの?ノルマンディーにでも上陸したの?

今時のカメラには水準器がついている、にも関わらず、被写体を画面一杯に封じ込めるために、カメラを斜めに構えてしまう人は後を絶ちません。

何を以て斜めなの?

まず第一に「斜め写真」の定義について。
水準器が重力を基準としている以上、地面がその絶対基準になります。しかし地面が写っていない写真、被写体そのものが斜めになっている場合においてはこの限りでなく、状況によって判断する必要がありそうです。

どうして斜めはいけないの?

人がみているものを自然な状態で撮影しないと、非常に歪な印象を与えます。斜めの写真を見る人は、その写真を頭の中で真っ直ぐに変換しようとしますから、1枚ならともかく2枚も3枚もとなると疲れてきます。

古い絵画をご覧ください。斜めの状態で描かれているものなど一枚もありません。もしあったとすれば、それを斜めで描かざるを得ない重大な秘密があるはずです。
映画でも同じように、画面自体が斜めになることはありません。3Dのゲームでもそうです。CoD4MWの冒頭では沈没船ですから、大きく傾きます。多くのFPS初心者がこの斜め具合に3D酔いを加速させ、始まる前に散っていきます。そうです、斜めって見ていて気持ち悪いんです

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どうして斜めになるの?

自然に撮っていれば自然と真っ直ぐ撮ろうとするのですが、多くの初心者は「画面全体に被写体を収めるため」に対角線を使ってしまい、写真が斜めになります。斜めにするくらいなら被写体を全部入れる必要はありません。あなたが撮っているのは写真であって、殺人事件の証拠品撮影ではないのです。

もう一つの大きな理由が「縦軸回転」です。
あなたが上や下を向いて撮影するとき、それまで水平だったカメラを大きく傾けてしまうことがあります。これはカメラの先に水平線が見えなくなるからです。こういった場合でも、可能な限り水平に保つ努力をした方が良いです。
被写体に対して斜め下などから広角レンズで撮影するとおおきなアオリがついて迫力のある写真が撮れますが、このときでさえ観る人は僅かな傾きを敏感に感じ取ってモヤモヤした気分を抱きます。

撮影時、シャッターを押す力で斜めになることがあります。こればかりは慣れるしかありません。ただ完全に合わせる必要のある写真は仕事用の写真ですから、あまり完璧を期す必要はないと思います。僅かな傾きであれば、現像時に調整することができます。

どうすれば水平に撮れるの?

方法はいくつかありますが、私が知る限りでは4つ方法があります。

カメラの水準器に頼る

高級機や今時のデジタルカメラにはついてます。デジタル水準器ですので、それほど精度はよくありませんが、無いよりマシです。高級機の場合はファインダーを覗いた状態で水準器が見えますから、構えたまま合わせることができます。もちろんライブビューに表示することもできます。

三分割線を表示して、水平あるいは垂直な被写体に合わせる

水準器が使えないアナタ。仕方がないので体感であわせるしかありませんが、普通にファインダーの四隅で合わせるのはなかなか困難です。そういった場合、3分割線をファインダー内やライブビュー内に表示して、その線を射界の水平あるいは垂直な物体に合わせることで水平を獲得します。

被写体に真正面から真っ直ぐに向かう

被写体にぴったり真っ直ぐ真正面から向かい合って撮ってみてください。比較的容易に水平を得られますし、良い写真が撮れます。「真正面でぴったり」という制約を意識するだけで、写真の幅が増えます。なぜなら、その種の制約は、撮り手に被写体を切り取ることを強制するからです。

現像時や出力時に水平補正する

最後の手段、撮った写真が微妙に斜めになってしまったときなど、パソコンに取り込んだ写真の傾き補正をかけることで解決します。現像ソフトでも可能ですが、Macの「写真」アプリにも傾き補正をかける機能はあります。

開放マニア「ボケを生かすのが一眼の醍醐味」

デジタル一眼レフカメラはレンズを交換することができて、その中でも単焦点レンズと呼ばれる焦点距離が固定されたものがあります。これらはズームレンズのように焦点距離を変えることができませんが、その代わり非常に写りが良く、しかも「明るい」レンズです。

明るいレンズって何?

明るいレンズとは、最大開放時の絞り値が小さいレンズのことです。ズームレンズなどではF/4-5.6などの絞り値ですが、単焦点レンズでは、F/1.8など絞り羽根を大きく開いた状態で撮影することができます。

こういったレンズでは、暗いところでの撮影に強く、また絞りを開放することにより、被写界深度(焦点が合う距離)が短くなりますから、前後がボケた写真になります。この前後のボケを表現することが、センサーが大きく明るいレンズを備えた一眼の醍醐味のひとつでもあります。

ボケ味の良さ

前後がボケた写真は、焦点が合った被写体を画面内で浮かび上がらせる効果があり、また平面でありながら非常に強烈な立体感を表現することが可能です。

公園の鴨

レンズが明るくてもマイクロフォーサーズ以下のセンサーサイズであれば、ボケそのものがとても大雑把になってしまい、画面全体のサイズ感が非常に矮小になってしまいます。逆にセンサーサイズがフルサイズや645くらい大きくなると、奥行きの表現が繊細になります。ボケを生かした撮影を行うのであれば、APS以上のセンサーサイズが求められます。それ以下のセンサーサイズでは、レンズの明るさはほとんど関係ありません。

なんでもかんでもボかせばいいの?

初心者が陥りがちな間違いです。ボケの効いた写真が面白くて、ついつい常時フル開放でなんでもかんでも撮ってしまいがちになります。その結果、次のような失敗写真が生まれます。

  1. ボケが強すぎて被写体そのものも若干ボケている
  2. 全体的にただモヤっとした写真になる
  3. 何を撮ろうとしたかわからない

ボケにはいくつか特性があります。その特性をよく掴んで、最適な条件を選び出さないと、非常に素人っぽい写真になってしまいがちです。その特性を明らかにした上で、上記の失敗の原因について考えます。

ボケとは被写界深度が浅いこと

前後がボケるということはつまり、焦点があう深さ「被写界深度」が浅いということになります。カメラを構えた人から5m〜6mまでの範囲にしか焦点が合わないのであれば、被写界深度は1mということになります。この範囲から離れれば離れるほど、ボケは強くなっていきます。

絞り値が小さいほどよくボケる

ボケ写真を撮るには絞り値が小さく、つまり絞り羽根を開く必要があります。こうすることで、斜めからのものも含めて多くの光を取り込むことができます。その結果、被写界深度が浅くなります。

被写体が近いほどよくボケる

カメラに近い被写体に焦点を合わせる方が被写界深度は浅くなります。逆に遠い方が被写界深度は深くなります。iPhoneのような非常に小さなセンサーのカメラでさえ、マクロ撮影に近いほぼ密着した被写体を撮ることでボケを生み出すことも可能です。

焦点距離が長いほどよくボケる

焦点距離が長い中望遠や望遠レンズは非常によくボケます。85mmレンズだと、F/4でも溶けるようにボケます。


これらのボケの特性は、図にしてしまえば容易に理解できます。ただ頭の中で理屈で覚えても、実際に撮影するときにかくあるべきを導き出すことは難しいです。このへんは慣れになってきますから、たくさん撮影しなければなりません。

失敗写真の1については単純で、被写界深度が浅すぎるために起こります。開放状態で被写体に非常に近づいて撮影すると起こります。レンズが明るくてもファインダーが暗いカメラでやりがちです。撮影時は結果をこまめに確認した方がいいでしょう。

失敗写真の2は、開放状態で非常に遠い距離の被写体を撮影しようとしたときに発生します。開放撮影でも無限遠に焦点を合わせることができますが、やはり被写界深度は浅いですし、開放状態だとシャープさを失います。遠い被写体や無限遠に合わせるときは、適度に絞った方がシャープさを得られます。

失敗写真の3は、おかしなところに焦点を合わせています。手前から奥に向かって伸びる手すりの一部に焦点を合わせて前後をぼかすと、なんの写真かわかりません。被写体に対して鋭角にレンズを向けるのはボケ具合の確認時くらいで、普通の撮影ではおかしな写真になりがちです。

第3 – うわっ…私の写真、ボケすぎ…? しっかり理解しておきたい被写界深度と距離の関係

何を撮りたいか分からない人にありがちなこと

たくさん写真を撮影してプリントするなりPCに取り込むなりで整理整頓し、数年後に見返したとき、何を撮りたかったか全然わからないものがあります。あるいは何故そんなものを撮ったのかわからない写真がみつかります。撮った本人でさえそうですから、赤の他人が見たときそういう写真は歴史的な評価が無い限り、無価値です。

どうしてそんな不思議な写真が生まれるのでしょう。こういうことは、写真歴の長いベテランさんもかつては通った道のりかと思われますが、多くの方は完全に忘れてしまっていて、ぼくたち素人の気持ちを理解しません。

何が撮りたいか分からない、あるいは何故それを撮ったか分からない

このような文化的損失が生まれる最大の原因は、デジタルカメラの普及です。あまり考えなくても簡単にシャッターを押すことができ、しかもいくら撮影したところでお金はかかりません。購入したカメラを耐久消費財として減価償却計算されている特殊な方を除けば、一枚のシャッターは雀の糞ほどの価値もないのです。

私の写真アプリには実に豊富な失敗写真、なんだかわからない写真が保存されています。この幅の広さにおいてはそのへんのカメラオタクにひけを取りません。その中から厳選された残念な写真をひもといていきましょう。

余計なものしか写っていない

西新宿

はい、一発目から見なかったことにしたい全力投球の失敗作です。なんでこんなもの撮って、しかも後生大事に保存してるんでしょう。ストレージの無駄です。この写真には写真に必要な一番大切なものが抜け落ちています。それが何かおわかりでしょうか?

被 写 体

これ、写真だけでなく絵画でも動画でも必要な画面の中心になるもの。広大な風景を撮影するのであれば、画面全体が被写体になることもありますが、この写真には美しい風景も、目を引く人物も、オブジェクトも、光も、影も、なにも写っていません。しかも若干斜めで、すこしボケていて、画面も明るすぎて白飛びし、色も薄いです。ここまで評価に値しない写真を撮る方が難しいです。首にぶら下げたカメラのシャッターを間違って切ってももう少しマシな画が撮れます。

何故こんなものを撮ってしまったのでしょう。理由はちゃんとあります。

この写真を撮影したとき、私は道路を挟んで反対側に立っており、ズームレンズのテレ端で撮影しました。撮りたかったのは、画面の中央付近にある庇です。おそらくその下にはかつて出入り口が存在したと思われるのですが、配管が通り壁が埋められトマソンと化していました。でもこの写真からそれを見つけ出すのは、心霊を発見するより困難かもしれません。

もうちょっとマシな撮影をするのであれば、道路を渡り、レンズの焦点距離を35mmくらいにして、庇とその下の壁を真正面からとらえるべきでした。それが正解かわかりませんが、どう撮り直してもこの写真より悪くなることはないでしょう。

いろいろ邪魔

谷端川

これは何を撮りたかったかわかりますね。正面のカメラ屋さんです。フィルムが廃れてこういった小さな街の写真屋さんが徐々に姿を消しています。いまのうちにと思って撮ったのだとおもいますが、実に残念なところがたくさんあります。えーっと、どこから突っ込みましょうか。

  • 手前の電柱が邪魔
  • 右脇の壁とか花が邪魔
  • 左の店が邪魔
  • 右の電柱も邪魔
  • 左の看板撮るのか撮らないのかハッキリしろ
  • 建物の上部を撮るのか撮らないのかハッキリしろ
  • 店舗が暗くてよくわからない
  • 道路入れる必要あるの?
  • やっぱりピンが甘い

言いたいことはいっぱいありますが、主な原因は「邪魔なものがたくさん写っている」ことです。写真は絵と違って「余計なものを画面から排除する」必要があります。写真は絵のように恣意的に嘘をつくことができませんから、写り込んだ何かが画面の中で必要以上に自己主張すると、あっという間にカオスと化します。

切り取ればいいってものじゃない

中野坂上

これはまた惨憺たる有様ですね。

別記事でもお伝えしたとおり、全力で斜めになっていますが、全然入りきっていませんし、何の全容を収めようとしたのかもわかりません。しかも右下になんか心霊らしきものが写っています。これ多分家の玄関だと思いますが、被写体が近すぎたために、「思い切って切り取る」ということに挑戦したのだと思います。結果がコレです。

被写体を切り取るというのは、あえて全体を写さないことによって何かを想起させることができる結構奥が深い技術です。想起する必要性のない人んちの玄関先を切り取ったところで誰もなにも考えません。

なんでそんなもの撮ったの?

公園

なんでしょうね、コレ・・・。

かろうじて焦点の合っているのは手前の木の表面の一部ですが、そこにはなにもありません。奥のボケもなんか汚いです。この写真をみて好意的な解釈をするならば「きっと手前の木にトンボかなにかがとまっていて、シャッターを切ったとき飛び去ってしまったんだ」となるでしょうが、実は最初からなんもありません。撮った本人ですら、なんでコレを撮ったのかよく覚えていませんが、この前後の写真から想像するに「単焦点レンズのボケすげー!!」って言ってた時代のようです。なんでもかんでもボかしてスゲースゲーを連呼してたんでしょう。

こういう失敗をしないためには

素人が素人に向けて言えることは3つあります。ベテランさんから見ると「必ずしもそうではない」と感じるかも知れませんが、ずぶずぶの素人には「こうだ!」と撮り方を制限させた方がずっとうまくいくことが多いです。

1.ちゃんとした被写体を選ぶ

意味不明な石とか木とか鉄パイプとかではなく、それが単体で被写体として価値をもつものを厳選しましょう。適当にシャッターを切る回数を減らし「これを撮った結果、その写真を自分自身で振り返ったとき何を期待するのか」というところまで物語を考えて撮るべきです。写真のセンスが全く無い人は、このような純粋でシンプルな意味が欠落していることがほとんどです。適当に感覚だけでシャッターを切り続けている限り、写真は一歩も上達しません。

2.真正面から撮る

この記事で取り上げられた衝撃的な失敗作に共通するのは、被写体(被写体ないのもありますが)に対して斜めから撮影していることです。斜めからの撮影は実は結構難しくて、立体感を出すためにライティングや背景、被写体までの距離、写り込む様々なものなど意識すべき問題が山積するのですが、真正面から画面にピッタリを意識するだけで、撮り手が一体何に向かい合おうとしているのか、が観る人に強く伝わります。

3.三分割法を意識する

撮影にすこし慣れてきたところで、三分割法という退屈で簡単な基礎理論は真っ先に無視されがちです。無視しないでください。これは絶対わすれてはいけません。ぼくたちはきっと死ぬまで素人のままで、素人が基礎を無視した瞬間、それは型破りではなく形無しにしかならないのです。三分割法なんかガン無視するプロの写真家の写真には、それを無視できるだけの強い意志力があります。それを身につけることができるのは、写真で食べている人だけです。

雑司ヶ谷

フルオートで連写した結果をご覧ください

最高の瞬間をとらえるために、現代のカメラは高速な連射性能を備えているのですが、その機能性によって連射した写真すべてを共有サイトにUPするという無料サービスに対するテロ行為を繰り返す人が増えています。早速わたしもやってみましょう。

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桜の花片が舞う瞬間を捏造するという最低な行為を記録した連射作品です。あまつさえ傾いてます。どうしてこんなに雑なんでしょうね。

連射することをやめるべき3つの理由

カメラの連射機能というのはスポーツ撮影やカワセミのダイブなど、極めて限られた瞬間的動作をとらえるための機能であって、なんでもかんでも連射するのは写真の品質を下げる原因になります。

1.連射しても何も変わらない

最初にフォーカスと露出を合わせると、連射の2射目以降は最初の設定のままミラーだけがパシャパシャ開閉して同じ設定の写真を連射します。最初の設定を間違うと、その後の10枚だか20枚は全部失敗します。

2.連射しても最高の瞬間は訪れない

ジャンプして空中で静止した写真を撮影するとき、毎秒11連射よりも、狙った一写の方が最良の瞬間をとらえることがあります。0.090909…秒のデジタル分解よりも、シャッターを切る人間の分解能の方が現時点では高性能です。
それに、動きをとらえるために連射機能に頼るのは、写真撮影の楽しさを大きく損なうかもしれません。その機能はプロが時間内に撮影するために用意されているもので、楽しむための機能ではないからです。

3.連射に慣れるとシャッターの価値が下がる

飛ぶ鳥などの撮影で連射機能を駆使していた時代、とにかくレンズに収まっている間にシャッターを押しっぱなしにすればいいという大雑把な感覚で撮影していましたから、静物撮影や人物撮影においてもやたらと連射するようになってしまいました。スピード勝負のスポーツ感覚ですから、最終的に仕上がった作品は、おなじ被写体を撮ったiPhoneの動画に劣るでしょう。

これ心霊写真じゃね?

反射物の前に立ち、自分自身が写り込んでしまった写真。あるいは太陽を背負い、カメラを胸の前で構える残念なシルエットが写り込んだ写真。

個人的にこういった写真を「心霊写真」と呼んでいるのですが、見出し画像のように露骨に写っているものならともかく、よくみると写っていた、という写真ほど残念なものはありません。

安比奈線

あえて自分の影を入れることで何かを表現しようとしたというコメントをみかけることがありますが、言葉で説明が必要ならそれは写真ではないと思いますし、何を言おうと赤の他人はそんな写真は失敗としかみなしてくれません。
上の写真はFinepixですね、非常に古いネオイチで、18-750mmというぶっ飛んだズームレンズがついています。ワイド端で撮ると驚異的な広角レンズになるため、自分の影を映してしまいがちです。

どうすれば自分が写り込むのを避けられるか

プロカメラマンが黒い服装と黒いカメラを好むのは、万が一自分が反射物に映り込んだときにごまかしが利くからです。素人のぼくたちはそこまで気にする必要はないと思います。だってシルバークロームのツートンボディのカメラの方がお洒落ですからね。

1.反射物の前に立つとき気をつける

街中で写真を撮る場合、反射物の前を避けるということはまず不可能です。ですが、完全に障害物のない反射物は少ないですから、そういったものの前に立ったとき、うまく障害物を利用して自分自身の姿を隠すようにしてください。

月島

2.広角レンズで撮るとき太陽を背負わない

自分の影を撮ってしまうのは、大抵広角レンズで太陽を背負ったときです。広角レンズは太陽に対して横向きか、場合によっては逆光上等で挑んでください。そもそも初心者に広角レンズは難しすぎます。

3.安易にレンズを下に向けない

自分の影や自分自身の反射した姿を撮ってしまうのは、レンズを下に向けたときです。床にヤフオクで転売する商品などを置いて撮影するとき、模造紙で背景を綺麗にしたのに自分自身の影がもやっと写っていると少し残念ですし、売上に響くかも知れません。

失敗する構図

写真を上達させるための近道として紹介される構図ですが、素人が知っておくべき構図は実は2つしかありません。それ以外は知らなくていいです。

初心者が知っておくべきたった2つの構図

3つ以上の選択肢を与えると、多くの人は混乱します。二者択一という制限が写真の幅を狭めることはありません。

1.被写体を寄せる(三分割法)

画面を縦横三分割にして、それぞれの線が交わる4つの点に被写体を置く構図です。今時のカメラであればファインダー内に三分割の線を表示させることができます。

この構図は被写体との距離や大きさによっていかようにもやりようがあるので、厳密に合わせる必要はないと思います。業務用の素材写真でなければ、普段撮りでガチっと構図がキマってる写真はものすごくいやらしく感じます。意識的にちょっと中央より脇に寄せる、くらいがちょうどいいです。

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2.真正面中央(左右対称構図)

文字通り真正面中央に立ったときに左右対称になる被写体においては、このシンメトリー構図が一番美しく感じます。左右対称でない被写体に対しても、正面から向かい合うことですこし映えるようです。

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初心者が失敗しやすい構図

世の中には色々な構図がありますが、実際にその手法で撮られた写真を見たときに、それほど美しいとは感じないものがあります。

1.四分割法

画面を四分割にして構図を整える方法です。これはカメラを構えてからシャッターを切るまでに著しく時間がかかり、写真家気取りの鼻つまみ者としてアピールする画を作り出せますが、人の心に響くものを撮ることは非常に難しいです。

2.日の丸構図

被写体ど真ん中の何も考えていない構図です。日の丸で良い写真を撮るのは非常に難しいので、最初は避けた方が良さそうです。

3.三角構図

画面中央に大きな三角形を描く構図ですが、真正面中央を覚えておけばあまり意識しなくていい構図です。知っていると余計混乱しかねないので、忘れてください。

4.ローアングルとハイアングル

前者はコスプレ撮ってる人たち、前者は今から食べるものを撮っている人たちに多く見られる撮り方ですね。前者は盗撮アングルとも呼ばれ、卑屈な印象を与えます。後者は光学顕微鏡で撮影された素子の写真のようで、説明的雰囲気に溢れています。いずれも良い写真を撮るのは難しい「縦軸回転」の撮影法です。

5.対角線構図

これは古典主義の絵画にもよく見られる構図のひとつですが、写真はあまり美しくありません。プロが撮った写真でさえ、対角線構図の写真はぱっとしません。むしろ、上の写真のように、三分割法で撮った結果、偶然対角線構図に仕上がっている場合がほとんどです。

6.二分割法

レンズの前にフィルタを装着して、上下の色合いを変える特殊な撮影などで用いられる構図です。とても素人が手を出せるものではありません。だいたい残念な写真に仕上がります。

構図を意識しすぎると失敗する

写真を初めてネットで構図を学べば、どんな下手糞でも、ものの一週間でお手本構図に忠実な写真を撮ることができるようになります。しかし、構図を意識した写真というのは、被写体よりも撮影者の自己主張を強く感じ、「俺の撮った素晴らしい写真を見てイイネしろよ!」とでも言わんばかりです。非常に嫌われやすいです。

基本的な三分割法と左右対称だけ意識しつつ、あとは大体適当でいいと思います。構図よりも瞬間にフォーカスした写真であれば、あとは被写体が自ずと輝いてくれます。

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禁じられたモノを撮る

街中で見かけるイベント、あるいは美術館内やライブ会場など、写真撮影が禁じられている場所は思っている以上にたくさんあります。こういった場所がなぜ撮影禁止とされているかわかりますか?

最低限のマナーすら守れない撮影者が多いからです。

ある種、自業自得な部分もあります。今やスマホで誰でも写真らしきものが撮影できる時代ですから、総ての撮影者にマナーを守って貰うのは効率的でありません。それならいっそ撮影禁止にしてしまおうと考えるのは自然なことです。

博多駅

最低限のマナーとは何か?

これからマナーカテゴリでこれ何回も繰り返しますから覚悟してください。

写真撮影における最低限のマナーは

射界に入る人をどける行為

です。もしこれをやってしまったアナタ、今すぐカメラを窓から投げ捨てて、スマホを膝でえいしゃ!とへし折って、金輪際永久に写真など撮らないでください。アナタに写真を撮る理由も資格も価値もありません。写真に向いていません。やめてください、写真やめてください。大事なことなのでもう一度いいますが、射界から人をどけるなら、写真やめてください。二度と撮らないでください。迷惑です。最大級に迷惑です。

撮影禁止のモノを撮りたいが

写真を撮らない、ということは勿論ですが、カメラ自体もしまえるならしまった方がいいです。係員に無用な疑念を抱かせますし、周囲の人の迷惑にもなりかねません。

それでもどうしても撮りたいアナタ、撮影した写真を個人的に保管する以上に拡散しないことを前提とするなら、比較的小さなミラーレスカメラなどで一瞬で一枚だけ撮ってしまえば誰も気づきません。カメラを被写体に向けて0.5秒以内に撮影を完了し、1秒後にはカメラをバッグにしまってください。誰にも気づかれない、ということが前提条件です。

撮影禁止をかたくなに守ってよい子でいることはたいへん素晴らしい心構えですが、写真を始めた時点でこの撮影禁止との戦いが始まっています。避けて通ることはできません。もし総てを避けて通る品行方正な撮影者でいられるならそれでよいでしょう。しかし、世間が眉をひそめるような撮り方をしたスノッブが価値を獲得するというのもこの世界のジレンマですから、写真で食べている人は撮った結果殴られたり訴えられたりすることを覚悟の上でシャッターを切っていることを忘れないでください。

知らない人を撮りたい

人物を撮影するのはモデルを雇うか、本人の許可を得て行う必要がありますが、たとえば街で撮影した写真に人が写り込んでしまうのはどうでしょう。街中で撮影した写真は絶対に知らない誰かが写ってしまいます。それを総て排除すれば、人のいる場所では写真を撮影することが不可能になってしまいます。人物の撮影、あるいは人物が写り込んだ写真の撮影の間に明確な線引きはできません。どちらも人物を撮っているという認識が必要だと思います。

ひとの写真を撮るのは恐ろしいことでもある。なにかしらの形で相手を侵害することになる。だから心遣いを欠いては、粗野なものになりかねない。

アンリ・カルティエ=ブレッソン

禁じられた場所で撮る

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立ち入り禁止場所や危険な場所での撮影に関しても、やはりマナーの問題が関わってきます。

特に世間的に多いのは撮り鉄が線路内敷地内に入り込んで脚立を立ててまで危険な撮影に挑むということですが、昭和のモノクロフィルム時代から彼らのクズ鉄っぷりは全く変わっていません。急に昨今酷くなったわけではなく、昔からクズはクズなのです。更にやっかいなことに、彼らは自分たちのクズっぷりに自覚的ですから、言葉で注意したところで耳を傾けてはくれませんし、きっと暴力行為に発展します。そういう場面をみかけたら、110番してしまうことが最良の対策です。

意外な撮影禁止場所や禁止方法

大きな公園内にはカメラを持った人が大勢居て、一見撮影は許可されているように見えますが、実は「三脚禁止」という制限が課せられているケースがあります。これは、公園内を通行する人が邪魔になる位置に三脚を立ててバズーカ砲みたいな望遠レンズで野鳥などの撮影を行う人が後を絶たないからです。こういった制限のある公園では、そのうち撮影自体も禁止されてしまいます。

京都の寺社仏閣

撮影マナーが全く無い撮影者が増えたために撮影禁止場所がどんどん増えているのが京都。京都にカメラを持って写真撮りに行くことほどナンセンスなことはありません。とりあえず許可されている場所であっても、三脚を道の真ん中に立てて撮影している邪魔な素人は増える一方で、近い将来京都全土が撮影禁止となるかもしれません。

店舗内

大抵の店舗内は写真撮影は明確に禁止されています。料理の写真を撮る人が増えた結果、撮影禁止にする飲食店も増えているようです。どうしても撮りたければもうダイレクトに店員や店長にかけあってください。悪意がなければ大丈夫な店舗が多いです。

アフェ・ド・クリエ

会社内

新しいカメラ買って会社にみせびらかしに持ってきて、倉庫内や工場内で撮影するせいで、徐々に禁止の動きが始まっています。会議でホワイトボードに書いた内容をスマホで撮影することに関しても敏感な時代ですから、巨大で高精細な画像が撮影できるカメラを社内に持ってきて写真を撮るのはセキュリティ上も内部統制上もよくありません。そもそも会社内なんか撮って楽しいですか?

イベント

路上でなんだか許可取ってなさそうなイベントをやっていたら、それは大体撮影禁止だと思った方がいいです。スマホで撮っている客にはあまりうるさく言ってきませんが、ちゃんとしたカメラを向けると係員が暴力で取り押さえにくるそうです。怖ろしいですね。イベントには行かないようにするべきかもしれません。

邪魔な枝は切り落とす

カワセミは餌付けし、川をせき止めてダイブポイントを人為的に作り出し、サンゴにK.Yと傷をつけ、封鎖されたドアを引っぺがし、邪魔な桜の木の枝は切り落とす。劇的な写真を撮影するために行われるこうした捏造行為は、それが発覚した途端、その写真の価値も撮った人の価値も地に貶めます。

演出と捏造の境界線

曖昧な基準ですが、観る人を騙す意図で撮られたものは捏造と言えるかもしれません。Webサイトの素材などはそれがちゃんとしたスタジオでライティングに配慮された状態で撮影が行われたことは容易に想像できます。

下の写真は私がカメラを買ったばかりの頃に撮影した捏造写真です。ブランコの間を桜の花片が舞い落ちる瞬間を撮影しようとしていたのですが、露骨に不自然ですね。自然に散る桜の花びらは、どんなに散り際であっても疎であり、総て完璧に計算されているから心に響くのです。

あれは散るのじゃない、散らしているのだ、一とひら一とひたらと散らすのに、屹度順序も速度も決めているに違いない、何という注意と努力、私はそんな事を何故だかしきりに考えていた。

小林秀雄『中原中也の思い出』

捏造

迷惑行為・犯罪行為

鉄道敷地内に侵入して桜の木を切ったしなの鉄道の事件がありますね。周囲に民家もない場所で、わざわざ鉄道敷地内に侵入し、車両の全容が見えなくなる桜の木を誰かが切った謎の事件です。誰が切ったかわかりませんが、ほとんどの人はこの事件からどういう種類の人間が犯人か容易に想像できます。

彼らは平然とキセル行為を行い、ホームを全力疾走して乗客を突き飛ばし、カメラの前を横切る一般人に罵声を浴びせ、子供を抱え上げて親に土下座させ、線路内に脚立を立てて列車の通行を妨げるなど、見下げ果てた行為になんら罪悪感を覚えない鉄道に群がるハエの群れです。彼らは自らの欲望に大変正直で、肝心の鉄道とも、写真とも、真面目に向かい合って葛藤したことなど一度もないのでしょう。最低限の礼儀作法を無視すると、もはやカメラを持ってホームを歩いただけで白い目で見られます。

こうした犯罪行為や、川をせき止めるといった迷惑行為によって撮影された写真にはなんの価値もありません。射界に入る人を「写真を撮るからどいてくれ」と言って人払いした写真にも同様に全く微塵の価値もありません。そう聞いて「人が邪魔なときどうすりゃいいのよ?」と思ったアナタ。明確で実に簡単な方法があります。お持ちのカメラを中古カメラ店に売却し、金輪際永久に写真を撮らないことです。

写真家気取り「オマエ写真下手だな」

自分自身の価値が高まったかのように見せかけるたった一つの方法。

それは他人の写真を根拠なく批判することです。あるいは根拠があっても根拠について自信が無くて明確に指摘できないケース。あたかも遙かなる高みから見下ろして何がいけないか少しずつヒントを与えるから自分で解決してみろという高圧的な態度。

旅写真などを貼り付ける2ch等でよく起こるケースですが、そういった人に健全な話し合いで構図レベルの意味性を少しずつ剥奪していくと、最後には画質や色合いなどの世界に飛び込んで話をうやむやにしようとします。
彼らはRAW画像の理屈だとか、JFIFの圧縮アルゴリズムに関する知識は皆無ですから、議論するだけ時間の無駄です。ペイント加工を前提としてHSVベースで話しても、プリント前提でCMYK基準で話しても、彼らは唯一の知識であるRGBやケルビンの世界から一歩たりとも外に出てきません。ダイナミックレンジをカメラの専門用語だと固く信じて疑わず、バイキュービックリサンプリングのモダンな実装について一度も検索すらしたことのない知識の浅はかさがそうさせるのでしょうか。
RAW原理主義者などは、真実のRAWの姿をみたことがないのです。ご存じですか? あれは画像ですらありません。D800Eなどの巨大なRAW画像を低スペックマシンのC1Pなどで読み込むと、一瞬真実の姿が映ることがあります。初めて観た人は「画像ファイルが壊れたか」と疑うでしょう。しかしあれが真の姿です。ひとつのドットには、赤か緑か青しかないのです。デジタルの真実をはき違えている機材自慢の吐く嘘を真に受けてはいけません。

攻撃することが目的の批判

どのジャンルでも同じですが、批判や評価の目的が作者に対する攻撃であってはいけません。

写真の場合は、撮った人によっては「いつどこで何を撮ったか」が主題であって、フォーカスが合ってないとか露出が間違ってるとか技術的なことはどうでもいいことがあります。そこでその瞬間シャッターを切ることができた幸運を共有したい人を相手に、構図がどうのこうの議論するのは無粋です。

また写真は絵や音楽の創作物と決定的に異なるのが、明確な意図を嫌う人が一定数いるということです。かっこよく見える構図、簡単には撮ることの出来ないNDフィルターを使った長秒露光、弱くなりがちな赤を浮き立たせるためにトーンカーブを弄った写真など、本来現像者が意図してなかった弱点を上げ連ねて徹底的に攻撃する人がいます。やれ逆光だ、黒潰れだ、白飛びだ、色収差だ、彩度上げすぎだ、その写真にほとんど何の関係もなく、真面目に検証してもあまり的確とは言い難いご意見の数々は、おそらく多くの場合は「撮った人を攻撃する」ことが目的です。

攻撃されやすい写真

添田撮影 - 50年前の小倉沢

上記のような写真は不思議と批判を受けることは皆無です。逆に、綺麗な構図で撮った写真を安易に価格コムや2chなどでバラ撒くと、壮絶な艦砲射撃の的になります。不思議ですね。これには明確な理由があります。

技術的意図の有無

構図を少しでも意識した場合、光源、射界に入るすべてのオブジェクト、絞り値、ISO感度、シャッター速度、焦点距離を完璧に近づけて撮影し、現像においても間違った加工を行ってはなりません。少しでもベテランっぽいことをすると、自称ベテラン写真家たちが一斉に集まり、自らのちっぽけな矜恃とプライドを満足させるために遙かなる高みから神の声を届けてくれます。

ほんとうに下手すぎる

すべての写真を斜めで撮影し、何を撮ったかわからない写真をバラ撒けば、それはさすがに酷いと言わざるを得ません。撮る人が何に向かい合ったかわからない写真なんて見る価値ありません。技術的なことに興味がなければ、「間違った写真の撮り方」をご覧になって、失敗だけ避ければいいです。

加工しすぎ

下の写真について「発色がすごい好き」と仰ってくれた方がいますが「加工しすぎ」と批判する方はいません。はっきりとした理由はわかりませんが、被写体がよかったことと、多くの人が「ひょっとしてデジタルじゃない」と気づいたのだと思います。そうです、これはフィルムです。Ekter100という現在は36枚1300円もする高級ネガフィルムです(当時は600円)。

江ノ島

この写真に近づけようとデジタル画像を編集すると、おそらく彩度を爆上げすることになりますが、その結果本来そこにあるはずのない色が浮き出します。これを「偽色」と言い、多くのデジタルカメラユーザが親の敵のように嫌います。フィルムをエミュレートするのはそう容易いことではありません。偽色を抑え、シャープさを保ちながら輪郭の柔らかさを再現するので、純正現像ソフトなどでは実現不能です。C1Pか最低でもLightroomが必要になります。それを使用したとしても、加工したことがバレた場合に心ない言葉に晒される覚悟が必要になります。

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